PET-CT
PET-CTについて
PET-CTとはPETとCTの特徴を融合させた検査です。
PETでは全身や心臓、脳などの細胞の働きを断層画像として捉え、生体機能を画像化し、同時にCTで正確な位置や大きさを撮影することのできる検査法です。
人間の細胞はブドウ糖をエネルギー源として活動しますが、がん細胞は成長が早く、正常細胞に比べて約3~8倍のブドウ糖を消費します。PET検査ではがん細胞のこの性質を利用して、ブドウ糖の構造に大変よく似たFDG薬剤を体内に投与し、薬剤が集積する場所をPETカメラで捉えて画像化します。
PET-CT検査ではPET撮影とCT撮影を一緒に行います。PET検査では組織や細胞の活動状況を画像で捉えることが得意ですが、臓器の形態を映し出すことは苦手です。そこで同時に撮影したCT画像を重ね合わせることで臓器の位置や形態が鮮明となり、病巣の位置や広がりを正確に診断することが可能になります。
PET-CT検査の利点・弱点
利点
- 一回の検査でほぼ全身(頭部~大腿)のスクリーニングが可能です。がんの再発・転移診断、原発の病巣が分からない原発不明癌の診断、化学療法などの治療効果の確認などに有効とされています。
- 発見が難しい小さな(1cm程度)がんの早期発見が可能です。
- 撮影画像から腫瘍の良・悪性の判断がある程度できます。(一部例外あり)
弱点
- ごく小さながん(5mm以下)や、がん細胞が薄く広がるスキルス性のがん、悪性度の低いがん(高分化がんや一部の甲状腺がん)などは発見が困難です。
- 胃や食道などの消化器官粘膜に発生する早期のがんは発見が困難です。
- 正常でもFDG薬剤が集まる臓器(脳、心臓、泌尿器系、肝臓など)の診断は難しいです。
- 空腹時血糖値が200mg/dlを超えると腫瘍へのFDG集積が低下し、正確な診断ができない可能性があります。
MRIやCTとの違い
MRIやCTでは臓器や病変の形態を画像化しますが、PET-CT検査では細胞の働き(代謝)を画像化します。PET-CT検査だけでは正確な診断はできません。それぞれの検査の特徴を生かし、複数の検査を組み合わせることが大切です。
心サルコイドーシスに対するPET-CT検査について
サルコイドーシスは全身のさまざまな臓器に原因不明の炎症が起こり、肉芽腫(慢性的な炎症で生じる腫瘤)を生じる病気です。この肉芽腫が心臓にできた場合を「心臓サルコイドーシス」と呼びますが、心不全や致死性の不整脈を引き起こすことがあるため放置できない病気です。
PET-CT検査は、他検査で心臓サルコイドーシスと診断された後、炎症の広がりや活動性を評価する目的で使用されることがあります。これは検査で使用するFDG薬剤が炎症細胞に集積しやすい性質を利用しています。
なお、心臓は正常でもFDG薬剤が集積しやすい場所(糖代謝が活発な場所)であるため、検査前は十分な絶食や炭水化物制限を行い、サルコイドーシスの病巣だけにFDG薬剤が集積するよう準備が必要です。
大型血管炎に対するPET-CT検査について
血管炎は血管に炎症が起こる病気です。体のどこかで血管に炎症が生じると、その周囲から全身に炎症が広がり、さまざまな臓器に障害をもたらす可能性があります。PET-CT検査では一回の検査で全身のスクリーニングが可能で、全身のどこに炎症を生じているか評価することができます。これは検査に使用するFDG薬剤が炎症細胞に集積しやすい性質を利用していますが、薬剤の集まり方で炎症の程度も推測することができます。検査の保険適用は大型血管炎(高安動脈炎または巨細胞性動脈炎)と診断された方が対象となります。
当院はサイクロトロンおよび薬剤合成装置を導入しています
PET-CT検査で使用する放射性薬剤FDGは半減期(放射能が半分になる時間)が約2時間と大変短いため、クリニック内の専用施設で薬剤を毎日製造しています。製造されたお薬は純度や安全性などの品質チェックを受け、検査を受けられる方の体重に応じて投与量が決定されます。